結論
歯科医院・クリニックがホームページ・Googleビジネスプロフィール・検索広告・SNSのどれで集客しても、発信する内容は医療法の広告規制の対象で、虚偽・誇大・他院との比較・患者の体験談・誤認させる治療前後の写真は禁止です。載せられる事項も法律で限られ、患者が自ら求めて見るウェブサイト等が4要件をすべて満たす場合だけ、その限定を外せます。
この記事でわかること
- 医療法の広告規制がホームページやSNSにもかかる理由と、違反したときの命令・罰則
- どの広告でも禁止される6つの表示と、患者の体験談・治療前後の写真の規定
- 広告できる事項と歯科の診療科名、限定解除の4要件と自由診療の費用・リスクの記載
- Googleマップ・Google広告・SNSで、医療法に加えて確かめる媒体のルール
- 公開前の確認表と、保険診療の予約・自由診療の相談の数え方
歯科医院(歯医者)・クリニックの集客は、ホームページ、Googleビジネスプロフィール、検索広告、SNSなどを組み合わせて進めますが、どの手段で発信しても医療法の広告規制がかかります。手段を選ぶ前に、どの媒体に何を載せてよいかを、医療法と厚生労働省の医療広告等ガイドライン(一般に「医療広告ガイドライン」とも呼ばれます)で確かめておくことが出発点になります(厚生労働省:医療法における病院等の広告規制について)。
医療法は、医業・歯科医業や病院・診療所について、方法を問わず、医療を受ける者を誘引するための表示を「広告」として規制しています。広告できる事項は医療法第6条の5第3項に列挙されており、ホームページなどは医療法施行規則の4つの要件をすべて満たすと、その限定を外せます(限定解除)。この記事は2026年10月20日時点の公式情報(厚生労働省・e-Gov法令検索)に基づきます。
この記事は、医療法・医療法施行令・医療法施行規則の条文と、厚生労働省や媒体の公式情報で確認できた範囲を、集客の手段ごとに確かめる順に並べたものです。個別の表現が規制に当たるかは判断しません。医療広告等ガイドラインとそのQ&Aの本文は、厚生労働省の同じページで公開されています。
歯科医院の広告規制は、ホームページやSNSにもかかる
医療法第6条の5第1項は、「何人も」、医業・歯科医業や病院・診療所に関して「文書その他いかなる方法によるを問わず」行う、医療を受ける者を誘引するための手段としての表示を広告とし、虚偽の広告を禁じています(e-Gov法令検索:医療法)。
方法を問わないという定義なので、チラシや看板だけでなく、自院のホームページ、ブログ、SNSの投稿、検索広告やSNS広告も、患者を誘引するための表示であれば同じ規定で確かめることになります。対象を「何人も」としているため、広告代理店や制作会社が作った広告も、作った側を含めて規定の対象です。
厚生労働省の委託事業「医療機関ネットパトロール」は、医療機関のウェブサイトにうそや大げさな表示がないかを監視し、通報を受け付けています。通報フォームでは、媒体として「ホームページ」「ブログ・SNS・動画」「口コミサイト・ランキングサイト・まとめサイト等」を、カテゴリーとして「医療機関(歯科)」を選べます(医療機関ネットパトロール)。
違反への対応は、医療法第6条の8と第87条に定められています。都道府県知事・保健所を設置する市の市長・特別区の区長は、違反のおそれがある広告をした者に報告を命じたり立入検査をしたりでき、違反していると認めれば、期限を定めて広告の中止や内容の是正を命じられます。この命令に違反した場合と、虚偽の広告をした場合は、6月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金の対象です(医療法)。
図1 医療広告の違反への対応の流れ。e-Gov法令検索「医療法」第6条の8・第87条をもとに作成(Framework作成)どの広告でも、虚偽・誇大・体験談・誤認させる前後写真は禁止
歯科医院・クリニックの広告は、媒体や限定解除の有無にかかわらず、虚偽、他院と比べて優良である旨、誇大、公序良俗に反する内容、患者等の体験談、誤認させるおそれのある治療前後の写真の6つが、医療法第6条の5第1項・第2項と医療法施行規則第1条の9で禁止されています(医療法、e-Gov法令検索:医療法施行規則)。
| 禁止されている広告 | 条文 | 原稿で確かめる箇所 |
|---|
| 虚偽の広告 | 法第6条の5第1項 | 実績・設備・資格など、事実と照らせる記述 |
| 他の病院・診療所と比較して優良である旨の広告 | 同条第2項第1号 | 他院と比べる見出し・比較表 |
| 誇大な広告 | 同条第2項第2号 | 治療の効果・期間・痛みを示す表現 |
| 公の秩序または善良の風俗に反する内容の広告 | 同条第2項第3号 | 画像・言葉づかい |
| 患者等の主観または伝聞に基づく、治療等の内容または効果に関する体験談 | 施行規則第1条の9第1号 | 患者の声、口コミの転載、紹介の投稿 |
| 治療等の内容または効果について患者等を誤認させるおそれがある、治療等の前または後の写真等 | 同条第2号 | 症例写真(ビフォーアフター)と添える説明 |
体験談の規定が対象にしているのは、患者等の主観または伝聞に基づく、治療等の内容または効果に関する体験談です。Googleマップの口コミや患者アンケートの感想を自院のサイトや広告に転載する場合は、その内容が治療の内容や効果に触れていないかを、この規定に照らして確かめます。
治療前後の写真の規定が禁じているのは「誤認させるおそれがある」写真等の広告で、条文は写真の掲載を一律に禁じる書き方にはなっていません。写真に添える説明の考え方は条文だけでは決まらないため、症例写真を載せる前に医療広告等ガイドラインとQ&Aを確かめます(医療法における病院等の広告規制について)。
広告できる事項は法律で決まり、歯科の診療科名も限られる
医療法第6条の5第3項は、省令で定める場合(限定解除)を除いて、法律に挙げた事項以外を広告してはならないとしています(医療法)。限定解除をしない広告に載せられる主な事項は次のとおりで、全部で16号あります。
| 広告できる事項(主なもの) | 第6条の5第3項 |
|---|
| 医師・歯科医師である旨、診療科名 | 第1号・第2号 |
| 名称・電話番号・所在の場所、管理者の氏名 | 第3号 |
| 診療日・診療時間、予約による診療の実施の有無 | 第4号 |
| 入院設備の有無、従業者の員数など、施設・設備・従業者に関する事項 | 第8号 |
| 医療従事者の氏名・年齢・性別・役職・略歴など(厚生労働大臣が定めるもの) | 第9号 |
| 相談・医療安全・個人情報の取扱いの措置など、管理・運営に関する事項 | 第10号 |
| 提供される医療の内容(検査・手術などの治療の方法は厚生労働大臣が定めるものに限る) | 第13号 |
| 平均的な入院日数・患者数など医療の提供の結果(厚生労働大臣が定めるもの) | 第14号 |
第9号・第13号・第14号の「厚生労働大臣が定めるもの」は告示で定められており、厚生労働省のページに「広告することができる事項」の告示として掲載されています(医療法における病院等の広告規制について)。
診療科名は、医療法施行令第3条の2で決まっています。歯科医業の診療科名は「歯科」と、歯科に小児(患者の年齢を示す名称)や、矯正・口腔外科などの事項を省令の定めるところにより組み合わせた名称です(e-Gov法令検索:医療法施行令)。看板やホームページで診療科名として掲げる名称は、この範囲から選びます。
ホームページは4つの要件をすべて満たすと、広告できる事項の限定を外せる
医療法施行規則第1条の9の2は、患者等が自ら求めて入手する情報を表示するウェブサイト等で、問い合わせ先を明示し、自由診療なら治療の内容・費用と主なリスク・副作用も示す場合に、医療法第6条の5第3項の限定を外せる(限定解除)としています(医療法施行規則)。4つの要件の条文は次のとおりで、第3号と第4号は自由診療について情報を提供する場合に限って求められます。
- 医療に関する適切な選択に資する情報であって、患者等が自ら求めて入手する情報を表示するウェブサイトその他これに準じる広告であること
- 表示される情報の内容について、患者等が容易に照会できるよう、問い合わせ先を記載するなどの方法で明示すること
- 自由診療に係る、通常必要とされる治療等の内容・費用等に関する事項について情報を提供すること
- 自由診療に係る治療等の、主なリスク・副作用等に関する事項について情報を提供すること
自由診療は、同じ条文で、医療保険各法などに基づく療養の給付や公費負担医療の給付の対象とならない検査・手術その他の治療と定義されています。自院が保険の対象外として提供している治療(たとえばインプラントやホワイトニングなど)をホームページで紹介する場合は、通常必要な治療の内容・費用と、主なリスク・副作用を示すことが限定解除の要件になります。
要件は「すべて」満たす必要があるので、1つでも欠ければ、そのページに載せられるのは広告できる事項だけに戻ります。
図2 限定解除の4要件の確かめ方。e-Gov法令検索「医療法施行規則」第1条の9の2をもとに、確かめる順に並べたもの(Framework作成)限定解除が外すのは医療法第6条の5第3項の限定だけで、第1項・第2項と施行規則第1条の9の禁止は残ります。施行規則第1条の9の2は、第6条の5第3項の「厚生労働省令で定める場合」を定める規定だからです。
図3 医療広告の規制の構造。e-Gov法令検索「医療法」第6条の5と「医療法施行規則」第1条の9・第1条の9の2をもとに作成(Framework作成)どの媒体が第1号の「患者等が自ら求めて入手する情報を表示するウェブサイトその他これに準じる広告」に当たるかは、条文だけでは決まりません。検索広告・SNS広告・チラシのように、見る人が探していなくても目に入る広告を限定解除の対象として扱えるかは、医療広告等ガイドラインとQ&Aで確かめます。
集客の手段ごとに、医療法に加えて媒体のルールを確かめる
歯科医院・クリニックの集客の手段は、どれも医療法の広告規制の対象になり、そのうえで媒体ごとのポリシーや景品表示法がかかります。検索広告ではサイトを訪れた人に絞った配信が、Googleマップでは口コミの依頼の仕方が、媒体のルールで制限されます。
| 集客の手段 | 医療法で確かめること | 媒体側で確かめること |
|---|
| ホームページ・LP(広告から最初に開くページ) | 禁止事項。広告できる事項以外を載せるなら限定解除の4要件 | 予約・相談までの導線と計測 |
| Googleビジネスプロフィール。MEO(地図検索の対策)の対象 | 自院が載せる説明文・写真・投稿 | 口コミの依頼に特典を付けない、良い口コミだけを選んで募らない |
| 検索広告(リスティング広告) | 広告文と遷移先のページ | 健康に関わる広告では、広告主が選択したオーディエンスを使えない |
| SNSの投稿・SNS広告 | 投稿・広告文・画像・動画 | Meta広告の健康に関する審査基準 |
| 口コミサイト・ポータルサイト | 自院が作る掲載内容 | 投稿を依頼するなら広告であることが分かる表示 |
| チラシ・看板 | 広告できる事項と診療科名の範囲か | — |
Googleは、パーソナライズド広告のポリシーで「健康」をデリケートな情報に該当するインタレスト カテゴリに挙げ、このカテゴリの商品・サービスを宣伝する広告主は、カスタマー マッチやデータ セグメント(旧称「リマーケティング」)など、広告主が選択したオーディエンスを使えないとしています(Google:制限付きターゲティング(パーソナライズド広告の場合)。英語版と照合)。サイトを訪れた人に再び広告を出す計画は組めない場合があるので、歯科・医療の広告は、地域とキーワードで探している人に出す検索広告から設計します。
Googleマップのポリシーは、口コミの投稿や否定的な口コミの修正・削除と引き換えに、割引や無料のサービスなどのインセンティブを提供すること、肯定的な口コミだけを選んで募ること、口コミに特定の内容を含めるよう依頼することを禁止しています(Google:禁止または制限されているコンテンツ)。依頼と返信の仕方はGoogleの口コミの返信の仕方と依頼の禁止事項、プロフィールの設定はGoogleビジネスプロフィールで地域から集客する方法で扱っています。
消費者庁は、広告であるのに広告であることが分からない表示(いわゆるステルスマーケティング)を景品表示法の規制対象とし、企業がインフルエンサーなどの第三者に依頼した投稿や、SNS投稿・レビュー投稿も含むとしています。規制の対象は商品・サービスを供給する事業者(広告主)です(消費者庁:ステルスマーケティングは景品表示法違反となります)。患者や知人に投稿を頼む場合は、医療法の体験談の規定にもあわせて照らします。
Meta広告(Facebook・Instagramの広告)で健康に関する広告が審査に通らないときの確かめ方はMeta広告の審査に落ちたときの確認ポイント、検索広告とSNS広告のどちらから始めるかはMeta広告とGoogle広告の違いで整理しています。
公開前は、媒体・禁止事項・載せる事項・媒体のルールの順に確かめる
歯科医院・クリニックの広告やホームページは、①媒体の種類、②すべての広告にかかる禁止、③載せる事項、④媒体のポリシー、⑤依頼した投稿・口コミの順に確かめます。媒体の種類を最初に置くのは、患者が自ら求めて見るウェブサイト等かどうかで限定解除を使えるかが変わり、③で載せられる範囲が決まるためです。
図4 広告・ホームページを公開する前に確かめる順番。医療法・医療法施行規則とGoogle・消費者庁の公式情報をもとに、確かめる順に並べたもの(Framework作成)次の確認表は、この記事で取り上げた条文と公式のポリシーの内容を、Frameworkが図4の順に並べたものです。
- 原稿の媒体は、ホームページ・LPか、検索広告・SNS広告・チラシ・看板か。限定解除を使う媒体として扱えるかをガイドラインで確かめたか
- 実績・設備・資格など、事実と照らせる記述に裏付けがあるか(法第6条の5第1項)
- 他院と比べて優良であると示す表現がないか(同条第2項第1号)
- 治療の効果・期間などを示す表現が誇大になっていないか(同条第2項第2号)
- 治療の内容・効果に関する患者等の体験談を、口コミの転載も含めて載せていないか(施行規則第1条の9第1号)
- 治療前後の写真が、治療の内容・効果を誤認させるおそれのある見せ方になっていないか(同条第2号)
- 限定解除をしない広告は、法第6条の5第3項の事項と施行令の診療科名の範囲で作ったか
- 限定解除をするページは、問い合わせ先を明示し、自由診療なら通常必要な治療の内容・費用と主なリスク・副作用を載せたか(施行規則第1条の9の2)
- Google広告で、広告主が選択したオーディエンスを使う設定にしていないか
- 口コミの依頼に特典を付けたり、良い口コミだけを募ったりしていないか。依頼した投稿は広告であることが分かるか
保険診療の予約は予約・来店型、自由診療の相談は問い合わせ型で数える
歯科医院・クリニックで成果として数えるものは、保険診療の一般的な受診なら予約・来店型として予約の完了と電話、自由診療の相談(カウンセリング)なら問い合わせ型として相談の申し込みにし、治療の開始は院内の記録で照らし合わせます。診療の種類で、載せる情報の確かめ方も変わります。
| 診療の種類(業態の区分) | 成果として数えるもの | 載せる情報で先に確かめること |
|---|
| 保険診療の一般歯科・小児歯科、医科の外来(予約・来店型) | 予約の完了、電話 | 診療日・診療時間・予約の有無(第4号)と所在地を、Googleビジネスプロフィールとホームページでそろえる |
| 自院が自由診療として提供する矯正・インプラントなど(問い合わせ型) | 相談の申し込み。治療の開始は院内の記録で照合 | 相談を受けるページに、通常必要な治療の内容・費用と主なリスク・副作用を載せる(限定解除の第3号・第4号) |
予約の完了と相談の申し込みを分けて測る方法はコンバージョン計測の設計、予約フォームで症状を聞く場合の個人情報の扱いは問い合わせフォームの点検表、Metaピクセルに健康に関する情報を送らない確かめ方はMeta広告の始め方で扱っています。Google広告の拡張コンバージョンを健康・医療に関連する成果に使えない点はGoogle広告のコンバージョン設定で説明しています。
医療法第6条の5は医業と歯科医業の両方を対象にしているので、内科・皮膚科などのクリニックも同じ構造で確かめ、診療科名は医療法施行令第3条の2の医業の名称から選びます(医療法施行令)。ネットで物販を完結させるEC型の取引は、この記事で確かめた条文の範囲を超えるため当てはめていません。
判断に迷う表現は、医院を所管する自治体の窓口に相談する
医療に関する広告の相談先は、医療機関を所管する自治体の窓口で、厚生労働省は窓口の一覧を公開しています(医療法における病院等の広告規制について)。報告命令や中止・是正命令の権限も、都道府県知事・保健所を設置する市の市長・特別区の区長にあります(医療法)。
相談の前に、迷っている原稿、掲載する媒体、自由診療かどうか、記述の根拠資料をそろえておくと、図4のどの段階で迷っているかを具体的に伝えられます。原稿が決まった後のホームページの構成や、予約・相談までの導線の設計は、Webサイト制作の支援内容にまとめています。
まとめ
歯科医院・クリニックの集客は、どの手段でも医療法の広告規制が前提で、限定解除の4要件を満たすウェブサイト等だけが、広告できる事項より多くの情報を載せられます。
まず、自院のホームページ、Googleビジネスプロフィール、SNS、広告の原稿を一覧にし、それぞれが患者の自ら求めて見るサイトか、目に入る広告かを分けます。次に、患者の声・口コミの転載・症例写真・他院との比較の箇所を探し、図4の②の禁止に照らします。自由診療を紹介しているページには費用とリスク・副作用が載っているかを確かめ、迷う表現は医院を所管する自治体の窓口に相談します。