結論
広告運用は、設計・計測の設定・入稿と制作・確認と改善の判断・権限の管理と成果の共有の5つに分けると、自社運用か一部外注か全面外注かを選べます。権限の管理と商談・成約の共有はどの場合も社内に残し、費用は運用手数料と、外注で減る社内の時間に1時間あたりの人件費を掛けた額を比べます。
この記事でわかること
- 広告運用の5つの作業と、作業ごとに発生する時期・必要な権限
- 外注しても社内に残す権限の管理と成果の共有
- 自社運用・一部外注・全面外注を選ぶ3つの問い
- 運用手数料と社内の人件費を比べる計算
- 一部外注で渡す権限と、業態ごとに社内に残る作業
広告運用をインハウス(自社運用)にするか外注するかは、運用の作業を「設計」「計測の設定」「入稿と制作」「確認と改善の判断」「権限の管理と成果の共有」の5つに分け、社内で担える作業は自社に、担えない作業だけを外に任せると決められます。全部を自社でやるか全部を任せるかの二択ではなく、制作だけ、初期設定だけといった一部外注も選べます。
どの選び方でも社内に残るのは、広告アカウントの管理者として権限を持つことと、商談・成約の結果を共有することです。Googleはタグ マネージャーのアカウントを外部の代理店ではなく組織内の担当者が管理するよう勧めており(タグ マネージャー ヘルプ:ユーザーと権限の管理。英語版と照合)、商談や成約はサイトの外で起きるため、自社が共有しなければ外注先には分かりません。
この記事では、内製化(インハウス化)、広告代理店や運用代行会社への外注、一部外注を、作業・権限・費用の3つの面から比べます。権限と媒体の仕様は、2026年10月14日時点の公式情報に基づきます(Google 広告ヘルプ、Metaビジネスヘルプセンター、アナリティクス ヘルプ、タグ マネージャー ヘルプ)。
広告運用の作業は5つに分けると、外注する範囲を決められる
広告運用の作業は、設計、計測の設定、入稿と制作、確認と改善の判断、権限の管理と成果の共有の5つに分けられ、作業ごとに発生する時期と必要な権限が違います。このうち1〜4は外部に任せられ、5の権限の管理と成果の共有は、外注しても社内に残ります。
図1 広告運用の5つの作業と、任せられる範囲。Google 広告ヘルプ「Google 広告アカウントのアクセス権の概要」、タグ マネージャー ヘルプ「ユーザーと権限の管理」をもとに作成(Framework作成)Google広告の権限で見ると、入稿と改善のための変更は「標準」の権限で行え、アクセスの許可や変更は「管理者」でなければできません(Google 広告ヘルプ「Google 広告アカウントのアクセス権の概要」)。
| 作業 | 中身 | 発生する時期 | Google広告で必要な権限 |
|---|
| 1 設計 | 目的、月の予算、成果として数える行動を決める | 始める前と、見直すとき | (決めるのは社内。設定は2・3で行う) |
| 2 計測の設定 | タグとコンバージョンを設定し、Googleアナリティクス(GA4)とつなぐ | 始める前と、サイトや成果の定義を変えたとき | GA4のキーイベントから作るなら標準以上。アナリティクスとのリンクでのインポートは管理者 |
| 3 入稿と制作 | 広告文・バナー・動画・LP(ランディングページ)を作り、入稿する | 新しい広告を出すたび | 標準以上(キャンペーンの編集) |
| 4 確認と改善の判断 | 結果を見て、予算・ターゲット・広告の変更を決める | 媒体が示す評価の期間ごと(下の段落) | 見るだけなら読み取り専用、変更は標準以上 |
| 5 権限の管理と成果の共有 | ユーザーの追加と削除、商談・成約の結果の共有、広告の承認 | 人の出入りのたびと、決めた間隔 | 管理者(アクセスの許可と変更) |
4の確認と改善の判断は、媒体が評価の期間として示す長さごとに行う作業です。Metaは、情報収集期間(いわゆる学習期間)は通常、最後の大幅な編集から1週間以内に約50件の結果を得たあとに終わるとし、終わるまで広告セットを編集しないよう勧めています(Metaビジネスヘルプセンター:情報収集期間について)。
Google広告は、スマート自動入札の評価に完全なコンバージョン サイクル(クリックから成果までの期間)2回分以上を含む期間を勧め、入札単価や予算を大きく変えたあとは1〜2サイクル待つよう案内しています(Google 広告ヘルプ:スマート自動入札のパフォーマンスを測定する際のヒント。英語版と照合)。この評価の期間の定義から、改善の判断は毎日ではなく、1週間以上の間隔で結果を見て決める作業になります。
1の設計で月の予算と成果の上限の単価を決める手順は広告予算の決め方、2の計測で何を成果として数えるかはコンバージョン計測の設計で扱っています。
権限の管理と成果の共有は、外注しても社内に残す
広告アカウントの権限の管理と、商談・成約の結果の共有は、外注しても社内に残る作業なので、どの選び方でも社内に担当者を決めます。Google広告では、アカウントへのアクセスの許可・変更と、代理店の管理用アカウントとのリンクの承認・解除は、管理者権限を持つユーザーだけができます(Google:アクセス権の概要)。
同じヘルプは、管理者が1人だけだと、その人が対応できなくなったときにタグにアクセスできなくなる可能性があるとして、管理者をもう1人以上追加するよう案内しています(英語版と照合)。タグ マネージャーのヘルプも、有効な管理者アカウントを少なくとも2つ用意することを勧めています(タグ マネージャー:ユーザーと権限の管理)。
Meta広告では、ビジネスポートフォリオの全権限を持つ人だけが、パートナー(広告会社など)を追加してページや広告アカウントを共有できます(Metaビジネスヘルプセンター:パートナーにビジネスアセットへのアクセス許可を付与する)。全権限を外注先だけが持つと自社ではパートナーの追加や共有ができないため、自社のユーザーにも全権限を持たせます。依頼の前に自社でそろえる権限・計測・素材の一覧は、広告運用代行を依頼する前に用意するものにまとめています。
成果の共有が社内に残るのは、商談や成約が広告の管理画面やサイトのタグの外で起きるためです。問い合わせのあとに商談になったか、契約に至ったかは、記録している自社が共有しない限り外注先には分かりません。Frameworkの運用代行でも、商談や成約の結果の共有と、広告の承認を依頼しています(広告運用代行の支援内容)。
社内の担当者が受け持つ作業は、次の4つです。
- 管理者を自社に置く:Google広告・GA4・タグ マネージャーの管理者と、Meta広告のビジネスポートフォリオの全権限を自社のユーザーが持つ。Google広告とタグ マネージャーは管理者を2人以上にする
- 渡す権限を選ぶ:外注先には、任せる作業に必要な権限だけを渡す(後の「一部外注では」の節)
- 成果を共有する:問い合わせのうち商談・成約に進んだものを、決めた間隔で外注先に伝える
- 広告を承認する:公開する広告文・画像・LPを、出す前に確かめる
自社運用・一部外注・全面外注は、3つの問いで選ぶ
自社運用にするか、一部外注か、運用ごと外注するかは、1週間ほどの間隔で改善を判断できる人が社内にいるか、入稿と制作を社内で回せるか、計測と初期設定を社内でできるか、の3つの問いで選べます。
図2 自社運用・一部外注・全面外注を選ぶ3つの問い。作業が発生する頻度の高い順に並べたもの(Framework作成)問いの順番は、作業が発生する頻度から決めています。確認と改善の判断は評価の期間ごとに繰り返し発生し、入稿と制作は新しい広告を出すたび、計測と初期設定は主に始める前に発生するため、繰り返し発生する作業から社内で担えるかを確かめます。
Q1で「いない」となり運用ごと外注する場合も、図の前提にある権限の管理と成果の共有の担当者は必要です。見積もりの費目と料金体系の比べ方は広告運用代行の費用と手数料の仕組み、外注先の選び方は広告運用代行の選び方のチェックポイントで整理しています。
Q3で「無理」となった場合の初期設定だけの外注は、設定が終わったら自社運用に移る形です。Google広告では、はじめて広告を出す広告主がアカウント登録から30日以内に電話かチャットで問い合わせると、専任のサポート担当がキャンペーンの設定を無料で手伝うと案内されています(2026年10月14日時点。Google広告「サポート窓口で無料の個別相談」)。
運用手数料は、外注で減る社内の時間の人件費と比べる
外注するかを費用で比べるときは、運用手数料を「外注で減る社内の時間×1時間あたりの人件費」と比べます。同じ広告費で比べるなら、媒体に払う広告費は自社運用でも外注でも変わらず、違いは運用手数料と社内で使う時間です。
外注で減る時間は、自社で運用したときの月の作業時間から、外注しても社内に残る時間(成果の共有や広告の承認など)を引いたものです。1時間あたりの人件費は、この記事では「担当者の月の給与に会社が負担する社会保険料などを足し、月の労働時間で割った額」とします。
次の数値は計算の手順を示すための仮定で、相場ではありません。自社運用の作業が月24時間、外注しても残る時間が月6時間、1時間あたりの人件費が3,000円、運用手数料が月6万円なら、外注で減る人件費は(24−6)×3,000円=54,000円で、運用手数料のほうが6,000円多くかかります。
図3 運用手数料と、外注で減る社内の人件費の比べ方(数値は仮定)(Framework作成)作業時間は推測で決めず、1か月分の作業を図1の5つに分けて記録して測ります。週ごとに記録した時間を月に直すときは、1か月を約4.3週(30.4日÷7日)として換算します。自社運用を始めた直後は、公式の教材で学ぶ時間も作業時間に含めます。
費用の差だけでは決めません。図3の仮定のように運用手数料が人件費を上回っても、Q1で改善を判断する人が社内にいなければ自社運用では判断する人が欠けるため、図2の問いの答えとあわせて決めます。外注しない場合に運用手数料がかからない範囲と、任せる作業ごとにかかる費目は運用代行の費用の記事の表で確かめられます。
一部外注では、任せる作業に合う権限だけを渡す
一部外注では、外注先に管理者権限や全権限を渡さず、任せる作業に必要な権限だけを渡します。Metaも、業務上必要なアクセス許可だけをメンバーに付与すると、ビジネスポートフォリオとビジネスアセットの安全を確保しやすくなると説明しています(Metaビジネスヘルプセンター:ビジネスポートフォリオとビジネスアセットのアクセス許可について)。
入稿や改善の判断を任せるならGoogle広告は「標準」、結果を見せるだけなら「読み取り専用」で足り、Meta広告はどちらも部分的なアクセス許可で任せるタスクを選べます。
| 任せる範囲 | Google広告 | Meta広告(パートナー) | GA4 |
|---|
| 制作だけ(入稿は自社) | 不要(素材を受け取る) | 不要 | 不要 |
| 計測と初期設定 | 標準(アナリティクスとのリンクは自社の管理者が操作) | 部分的なアクセス許可(任せるタスクを選ぶ) | マーケティング担当者または編集者 |
| 運用(入稿と改善の判断) | 標準 | 部分的なアクセス許可(広告の管理など) | マーケティング担当者または閲覧者 |
| レポートの作成だけ | 読み取り専用 | 部分的なアクセス許可(任せるタスクを選ぶ) | 閲覧者 |
Google広告の読み取り専用はキャンペーンの表示とレポートの実行ができ、キャンペーンの編集はできません。標準はキャンペーンを編集できますが、アクセスの許可やアナリティクスとのリンクはできません(Google:アクセス権の概要)。
GA4の役割のうち、マーケティング担当者はオーディエンス・イベント・キーイベント(以前の GA4 の「コンバージョン」)を作成・編集・削除でき、キーイベントをGoogle広告にインポートできます。編集者はプロパティ単位の設定をすべて管理でき、閲覧者は設定とデータを表示できます(アナリティクス ヘルプ:アクセス権とデータ制限の管理)。
Meta広告でパートナーに部分的なアクセス許可を渡すと、コンテンツの作成や広告の管理など、選んだタスクだけを任せられます。全権限を渡したパートナーもアセットを他のビジネスと共有することはできず、共有できるのはアセットを所有する組織だけです(Meta:パートナーにアクセス許可を付与する)。
取引や請求書、支払い方法などの財務情報の閲覧と管理は、全権限や部分的なアクセス許可とは別に付与する財務のアクセス許可です。個人に頼む場合は、ビジネスポートフォリオにメンバーとして追加するときに、基本的なアクセス許可だけを3日間〜75日間に限って付与する一時的なアクセスも選べます(Meta:アクセス許可について)。外注先を変える、または契約を終えるときの権限の外し方は、広告代理店の乗り換え手順で整理しています。
自社運用に切り替えるなら、公式の無料教材と計測の確認から始める
自社運用を始めるときは、GoogleとMetaの無料の学習教材で管理画面の基本を学び、成果を数える計測が動いていることを確かめてから、配信の変更に進みます。
Googleはスキルショップで、広告主向けのGoogle広告の無料のeラーニングを提供しており、検索・ディスプレイ・測定・動画・ショッピングの学習プログラムと認定資格があります(スキルショップ「Google 広告トレーニング(無料)」)。認定資格の理解度テストもスキルショップで受けられ、Googleは準備としてGoogle広告の実務経験を勧めています(Google 広告ヘルプ「Google 広告の認定資格について」。英語版と照合)。
Metaは、Meta Blueprintで、Facebook・Instagramなどの無料のオンラインコースとオンラインセミナーを提供しており、Meta認定資格は無料のコースとは別に用意されています(Meta Blueprint:無料オンライントレーニング)。アカウントを自社名義で作る手順は、Google広告の始め方とMeta広告の始め方にまとめています。
代理店に任せていた運用を自社に戻す場合は、変更のたびに評価の期間を待つ必要があるため、切り替えの直後にどこまで作り変えるかを先に決めます。Meta広告では、ターゲット設定・クリエイティブ・最適化イベント・入札戦略の変更、新しい広告の追加、7日以上の停止が大幅な編集で、広告セットが再び情報収集期間に入ります(Metaビジネスヘルプセンター:大幅な編集と情報収集期間)。
Google広告では、入札戦略の作成や設定の変更、キャンペーン・広告グループ・キーワードの追加や削除で、入札戦略のステータスが「学習中」になります(Google 広告ヘルプ:キャンペーンの学習期間の長さ)。結果を判断できる時期の数え方は広告の成果が出るまでの期間、毎月見る指標は広告運用レポートの作り方と見方で確かめられます。
業態によって、社内に残す成果の共有の重さが変わる
社内に残す成果の共有の作業は業態で変わり、問い合わせ型は商談・成約の結果、予約・来店型は電話や来店の記録、EC型は返品・キャンセルの扱いと商品カタログの権限が中心になります。
- 問い合わせ型(工務店・士業・BtoBサービスなど):問い合わせのうち商談・成約に進んだかはサイトの外で決まるため、改善の判断を外注しても、商談・成約の記録は社内に残ります。記録を外注先に共有するか、広告の管理画面に取り込むかを決めます(サイトの外で起きた成約を広告に返す方法)。
- 予約・来店型(店舗・クリニック・サロンなど):電話予約や来店はフォームの送信と違ってサイトのタグだけでは数えられないため、電話の計測や予約・来店の記録を誰が集めるかを決めます。地図検索のプロフィールの更新を外に任せる場合も、自社がオーナーの権限を持ち続けます(Googleビジネスプロフィールのオーナーと管理者)。
- EC型(ネットショップ・通販):購入はサイトのタグで数えられるため、商談・成約を共有する作業はありません。そのかわり、返品・キャンセルを成果から除くかと、Meta広告で使う商品カタログの全権限を誰が持つかを決めます。カタログも、全権限やアクセス許可を割り当てるビジネスアセットの1つです(Meta:アクセス許可について)。
まとめ
まず、今の広告運用の1か月分の作業を、図1の5つに分けて時間とともに書き出します。あわせて、Google広告の[管理者]メニューの[アクセスとセキュリティ]で自社のユーザーが管理者権限を持っているか、管理者が2人以上いるかを確かめます。
次に、図2の3つの問いに答えて、自社運用・制作だけの外注・初期設定だけの外注・運用ごとの外注のどれにするかを決めます。外注を含めるなら、書き出した時間から外注しても社内に残る時間を引き、1時間あたりの人件費を掛けて、見積もりの運用手数料と並べます。
よくある質問
- 兼任の担当者だけで、広告運用を自社でできますか?
- 兼任の担当者で自社運用ができるかは、改善の判断に使う時間を評価の期間ごとに確保できるかと、入稿・制作の量で決まります。Metaビジネスヘルプセンター「情報収集期間について」は情報収集期間が終わるまで広告セットを編集しないよう勧めており、Google 広告ヘルプ「スマート自動入札のパフォーマンスを測定する際のヒント」も評価にコンバージョン サイクル2回分以上の期間を勧めているため、判断は毎日ではなく一定の間隔で行います。制作の量が多い場合は、制作だけを外注する方法もあります。
- 代理店に任せたまま、社内の担当者が運用を学ぶ方法はありますか?
- 代理店に運用を任せたままでも、社内の担当者にGoogle広告の「読み取り専用」の権限を付けると、編集はできない状態でキャンペーンの中身を見てレポートを実行できます(Google 広告ヘルプ「Google 広告アカウントのアクセス権の概要」)。あわせて、スキルショップのGoogle広告の無料のeラーニングや、Meta Blueprintの無料のオンラインコースで管理画面の基本を学ぶと、代理店の報告の数字を自社で管理画面と照らし合わせられます。
- Google広告の認定資格は、どのように取得しますか?
- Google広告の認定資格は、スキルショップで分野ごとの理解度テストに合格すると取得できます。Google 広告ヘルプ「Google 広告の認定資格について」によると、合格には制限時間75分で80%以上の正解が必要で、不合格の場合は1日後から再受験でき、資格の有効期限は1年間です。Googleは準備として、オンライン広告の基礎知識に加えてGoogle広告の実務経験を勧めています。