広告運用代行を依頼する前に用意するものは、広告の目的と予算などの事業の情報、自社名義の広告アカウントと管理者権限、成果を数える計測、広告に使う素材と表現の根拠の4種類です。相談の時点で全部そろっている必要はなく、事業の情報は相談前、アカウントと権限は契約前、計測と素材は運用を始める前にそろえます。
アカウントを契約前に自社で用意するのは、だれのアカウントで始めるかによって、後から自社でできることが変わるためです。Meta広告では、ビジネスポートフォリオで新しく作った広告アカウントはそのポートフォリオに永続的に登録され、削除や移動ができません(Metaビジネスヘルプセンター:ビジネスポートフォリオに広告アカウントを追加する)。Google広告では、アカウントへのアクセスの許可やアクセス権の変更ができるのは管理者権限を持つユーザーだけです(Google 広告ヘルプ:アクセス権の概要)。
この記事は、広告運用を代理店へ初めて外注する場合と、自社で運用してきた広告を任せる場合を対象に、相談から運用開始までの依頼の流れに沿って準備を整理します。媒体・ツールの仕様は、2026年10月17日時点の公式情報に基づきます(Google 広告ヘルプ、Metaビジネスヘルプセンター、アナリティクス ヘルプ、タグ マネージャー ヘルプ、消費者庁)。
用意するものは4種類で、相談前・契約前・開始前に分けてそろえる
広告運用代行の準備は、事業の情報・アカウントと権限・計測・素材の4種類を、相談前・契約前・運用開始前の3つの時期に分けてそろえます。時期を分けるのは、それぞれを使う場面が違うためです。
- 事業の情報(目的・成果の定義・予算・実績)は、提案と見積もりの前提になるので、相談前に書き出します。
- 広告アカウントと管理者権限は、代理店が作業を始めた後では持ち主を変えにくい仕組みなので(冒頭のMetaの例)、契約前に自社で用意します。
- 計測は、Google広告がコンバージョンのデータを使ってスマート自動入札でキャンペーンを最適化するため(Google 広告ヘルプ:コンバージョン測定について)、配信を始める前に動いている必要があります。
- 素材のうちLP(ランディングページ)は、正しく機能しないリンク先の広告が不承認になるため(Google 広告ポリシー ヘルプ:リンク先の要件)、審査の前に完成させます。
時期ごとに並べると、相談前に書き出すのは事業の情報で、アカウント・権限・計測・素材は契約の前後にそろえる順になります。
Frameworkの場合も、ヒアリング、提案、契約、権限・素材・計測の準備を経て運用を始めます(Frameworkのよくある質問「依頼から開始までどれくらいかかりますか?」)。開始時に確認する項目は運用代行の支援内容に、準備から成果を判断できる日までの数え方は広告の成果が出るまでの期間にまとめています。
相談前に、成果・上限・予算・実績を1枚に書き出す
相談の前に書き出すのは、広告で増やしたい成果、成果1件にかけられる広告費の上限、月の広告費、これまでの実績の4つと、任せる範囲・社内の窓口です。同じ1枚を渡せば、複数の代理店に同じ前提で提案と見積もりを頼めます。
- 増やしたい成果:問い合わせ・予約・購入など広告で数える行動と、その先の商談・成約まで追うか。何を成果として測るかはコンバージョン計測の設計で業態ごとに整理しています。
- 成果1件にかけられる広告費の上限:この記事では許容CPA(CPAは成果1件あたりの広告費)を、利益を確保したうえで成果1件に使える広告費の上限とします。粗利から出す手順は広告予算の決め方にあります。
- 月の広告費と期間:広告費と運用手数料などの費目の分け方は広告運用代行の費用と見積もりの見方で確かめられます。
- これまでの実績:使った媒体・期間・広告費・成果の件数と、問い合わせ後の商談・成約の件数。広告を出したことがなければ、サイトや電話からの月ごとの問い合わせ件数。
- 任せる範囲と社内に残す作業:入稿と改善だけか、計測の設定やバナー制作まで含めるか。決め方は広告運用は自社か外注かで解説しています。
- 窓口と承認する人:連絡の窓口、広告の原稿を承認する人、商談・成約の結果を共有する人。
Frameworkのよくある質問でも、社内で必要な準備として、商品・顧客情報、使える実績や素材、既存データの共有と、窓口担当、施策や原稿の承認、商談・成約結果の共有を挙げています。Frameworkへの相談自体は、資料がそろっていなくてもできます(Frameworkのよくある質問「社内では、どのような準備や作業が必要ですか?」)。
広告アカウントは、自社名義で作ってから代理店に権限を渡す
広告アカウントは、自社のGoogle広告アカウントとMetaのビジネスポートフォリオ(ヘルプの一部には「ビジネスマネージャ」という表記も残っています)を先に用意し、自社のユーザーが管理者権限(Metaでは全権限)を持ったまま代理店に権限を渡します。そうすると、代理店にどこまで渡すかを自社で決められます。
Metaは、代理店のポートフォリオで作った広告アカウントを自社に移せない
Meta広告では、ビジネスポートフォリオで新しく作った広告アカウントは、そのポートフォリオから削除したり移したりできず、広告アカウントを所有できるビジネスポートフォリオは1つだけです(Meta:広告アカウントを追加する)。代理店のポートフォリオで作ると所有者は代理店のままで、自社はアクセスの共有を受ける形になるという仕組みなので、自社のポートフォリオで作ってから代理店をパートナーとして追加します。
同じヘルプによると、新しく作ったビジネスポートフォリオで作れる広告アカウントは最初は1つで、キャンペーンを実施して支払いが行われると最大3つに増えます。
Google広告は、自社の管理者が代理店のMCCとのリンクを承認する
Google広告では、代理店のクライアント センター(MCC)アカウント(複数の広告アカウントをまとめて管理するためのアカウント)からのリンク リクエストを承認・拒否できるのも、MCCとのリンクを解除できるのも、自社のアカウントの管理者権限を持つユーザーです(Google:アクセス権の概要)。
MCCから新しいGoogle広告アカウントを作ることもでき、その場合アカウントはMCCに自動的にリンクされます(Google 広告ヘルプ:アカウントを MCC アカウントにリンクする)。MCCがオーナーに設定されていると、そのMCCの管理者権限を持つユーザーは、アカウント内のユーザーのアクセス権やリンクの設定も編集できます(Google:アクセス権の概要。英語版と照合)。代理店のMCCで作ってもらう場合は、自社のユーザーを管理者として招待してもらえるかを契約前に確かめます。
今の広告アカウントの状態で分けると、自社に管理者がいれば権限を渡すだけで始められ、前の代理店などが持っている場合は自社の管理者の確保が先になります。
前の代理店や担当者がアカウントを持っている場合の手順は、広告代理店の乗り換え手順で解説しています。
権限を渡す日までに、IDと自社の管理者2人をそろえる
代理店に権限を渡す作業は、Google広告では代理店のMCCからのリンク リクエストを自社の管理者が承認し、Meta広告では自社のビジネスポートフォリオの全権限を持つ人が代理店をパートナーとして追加して進めるので、その日までに双方のIDと、操作できる自社の担当者をそろえます。
Google広告のリンク リクエストは、代理店がMCCから、自社のGoogle広告アカウントのお客様ID番号を入力して送ります。自社の管理者は、[管理者]メニューの[アクセスとセキュリティ]の[管理者]タブにある[リンク リクエスト]で承認します(Google:MCC アカウントにリンクする)。
Meta広告では、パートナーを追加できるのはビジネスポートフォリオの全権限を持つ人だけで、代理店にもビジネスポートフォリオが必要です。代理店からビジネスポートフォリオIDを受け取り、[設定]の[パートナー]で追加して、共有するアセットと、全権限か部分的なアクセス許可かを選びます(Metaビジネスヘルプセンター:パートナーにビジネスアセットへのアクセス許可を付与する)。
2つの媒体を並べると、Google広告は代理店から、Meta広告は自社から操作を始める点が違います。
公式ヘルプの内容を、Frameworkが権限を渡す日までに確かめる順に並べると、次の6項目になります。
- Google広告のお客様ID番号を代理店に伝えられる
- Google広告に自社の管理者が2人以上いる(管理者が1人だけだと、その人が対応できなくなったときにタグにアクセスできなくなる可能性があるため、Googleは管理者をもう1人以上追加するよう案内しています。Google:アクセス権の概要。英語版と照合)
- Metaのビジネスポートフォリオの全権限を持つ自社の人がいて、ポートフォリオの二段階認証を有効にした(有効でなければパートナーの追加前に有効にします)
- 代理店のビジネスポートフォリオIDを受け取り、全権限を持つ別の人の承認が必要になった場合の担当者を決めた(Meta:パートナーにアクセス許可を付与する)
- Googleアナリティクス(GA4)とタグ マネージャーに自社の管理者がいる(タグ マネージャーのヘルプは、有効な管理者アカウントを少なくとも2つ用意し、アカウントを外部の代理店ではなく組織内の担当者が管理するよう勧めています。タグ マネージャー ヘルプ:ユーザーと権限の管理)
- 代理店に渡す範囲(Google広告の「標準」か「読み取り専用」か、Metaの部分的なアクセス許可で任せるタスク)を決めた
Metaで全権限をパートナーに渡すと、そのパートナーはすべてを管理できますが、アセットを他のビジネスと共有できるのは所有する組織だけです(Meta:パートナーにアクセス許可を付与する)。任せる作業ごとの権限の選び方は、広告運用は自社か外注かの一部外注の表で確かめられます。